アニマルオフィス小話
ドリルを持つと性格が変わる…!?
(モリッシュが玄関にやってくると、なぜかメイトが受付にいる。) | |
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この間はアスティマに変な薬を注射されそうになって逃げ回ってたら、転んで歯を折っちゃったよ…。 (あたりを見回して)あれ、メイト、ティファニーは受付を放ってどこへいったんだ? |
ティファニーにご用ですか?今日は彼女、非番ですよ。 | |
…しょうがないなあ〜、実はこの間、アスティマに変な薬を注射されそうになって逃げ回ってたら、転んで歯を折っちゃってさ…。で、模型作りの好きなティファニーなら、何とかしてくれると思って来たんだけど…。 | |
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この間どたばたしていたのはそのためだったんですね。歯が折れてしまったとは災難ですから、わたしが歯が生えるおまじないを教えてあげましょうか? |
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歯が生えるおまじない…うっかりするとサーベルタイガーみたいになりそうだから、遠慮しとくよ。 |
(すると、「歯が折れた」という単語を聞きつけて、オフィスの「マッドドクター」、ハルロードが音もなく接近する。) | |
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モリッシュ君、歯が欠けたとはいけませんね。今、ちょうど手があいていますから、治療してあげましょう。 |
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え…、ハルロードが…? |
猫族だって歯は大切でしょう。脅すわけではないですが、歯が抜けたり欠けたままにしておくと、そのうちとなりの歯まで斜めになって、最後には他の歯まで抜けますよ。オフィスの健康を守るのはわたしの仕事のひとつですから、嫌でも来てもらいますよ! | |
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早くよくなるようにって、呪っておきますわ。 |
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なんでこうなる〜!? |
(モリッシュ、ハルロードに引っ立てられて退出) | |
(ハルロードとモリッシュが治療室に入ると、そこにはティファニーが治療台のドリルで何かせっせと削っている。) | |
いつ聞いても、このドリルの音って嫌だな〜。 | |
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ティファニー君、治療用のドリルはリューターの代用にしないでとあれほど言ったでしょうが!? |
ティファニー、何でこんなとこにいるんだ、非番じゃないのか? | |
(ティファニーは悠然と、なにやら削りながら返す) | |
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えー!?違いますよ〜。ハルロードさんに頼まれた詰め物の銀歯ですよ〜。 |
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ああ、そうだったのですか。モリッシュ君の歯が欠けたそうですから、猫族用の犬歯のさし歯を出してください。 |
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猫なのに犬歯とはこれいかに…。さっそく用意してきます〜。 |
(ティファニーが準備室に消えると、ハルロードのすそを引っ張って、モリッシュが聞く) | |
ハルロード、ティファニーって歯医者なのか…? | |
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彼女は歯医者ではなく、金歯や入れ歯を作る歯科技工士ですよ。彼女はいつも何か作ってますから、スカウトしたら大喜びで毎日やってますよ。 |
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…わたしも何か一芸で、副業をはじめようかな…?ところでアスティマやアクエバは…? |
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地下で何かやってますよ。というより彼女が治療に当たったら、また何かされますよ。フフフ…。 |
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ゾーッ!(前回の記憶がよみがえったらしく、青くなる) |
(ティファニーが戻ってくると、ハルロードは治療の準備をはじめ、モリッシュは診察台に上る) | |
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(モリッシュの歯の抜けたあとにさし歯を合わせて) 色、形ともに、一発であてはまるとは幸運ですね。これをセメントで固着すれば、治療はおしまいです。かみ合わせはどうですか? |
(鏡を見て)…前と同じだ!ハルロード、助かったよ! | |
(とそこへ、プリスがブリスを引っ張ってくる。) | |
うわ〜、嫌だよ〜!歯を削られるなんて!! | |
仕方がないでしょ、あたし達ハムスターは死ぬまで歯が伸びつづけるんだから、ときどき削ってもらわないと物が食べられなくなるってかあさん言ってたでしょ! | |
ああ、予約ですね。わたしはモリッシュ君の治療にまだまだ手間がかかりそうですから、ティファニー君が変わりに削ってあげてください。(といってモリッシュの歯の固着を始める) | |
えーっ!?ティファニーさんが削るの!?ティファニーさんにかかったら、歯もレジンもプラスチックも同じだよ〜! | |
(苦笑して)ひどい言われようですね。 | |
そこまでわたしはマッドじゃありません! | |
それじゃまるで、わたしがマッドドクターのように聞こえるではないですか。 | |
(小声で)それは事実〜。 | |
(観念したブリスは口をあけ、ティファニーは診察する) | |
やっぱり伸びてますね。削らなきゃいけませんね。(といってドリルビットをつけて)ついでに徹底的に悪いところを治しましょう。ウフフフフ…… | |
モガー!!(声にならないらしい) | |
(しばらくたって、ブリスの治療が終わる) | |
はい、終わりました。かみ合わせはどうですか? | |
かみ合わせはよくなりましたけど、ティファニーさん、ドリルを持っている間はいつもと違って、なんだか怪しげなオーラのようなものを発してましたよ。 | |
怪しげなオーラねえ。(と言って苦笑する)で、どうやって削ったのですか? | |
いつものとおり、リューターの荒削りから初めて、紙やすりの仕上げとぎまでやりました。 | |
か…紙やすり…。う〜ん…。君は歯科技工に専念してもらったほうがいいかもしれませんね… | |
(その会話を尻目に) | |
確かにティファニーさん、クリスお姉ちゃんやルシーアさんよりも怖かった。ドリル持っているときは。 | |
……うん。あのときのアスティマ以上だったかも。もしかしたら、マッド性は…、伝染するのか…? | |
マッド性!?真剣といってください! | |
なお、このあと、ティファニーが歯科治療をやることはなかったそうです〜。 | |